システム開発のタスク定義③~システム運用業務・データ移行/システム切り替え・ユーザ教育~

ITが当たり前の時代、何か新しいことを始めるときに、あたらしいITシステムが必要となることは不可避です。システムを作っていく、システム開発のプロジェクトをどのように進めていくかは、ビジネスの変革を実現するためにも非常に重要です。

プログラマーが一人でプログラムを書いてシステムを作っていくならば、適当に試行錯誤してもいいですが、大規模システムを開発していく際は、ある程度一定のルールのもとに作業を進めていく必要があります。

特に大規模システム開発においては、きちんとあるタイミングタイミングで物事を固めて、試行錯誤ができるだけ発生しない様、ウォーターフォールで進めることが結果的に成功の要因となると私は思っています。

今の時代はアジャイル開発が普通ではありますが、私は、アジャイル開発は小さなウォーターフォール開発の繰り返しだと思います。

プロジェクト開始時点で、最初から最後まで全体としてどんなタスクを実施しなければならないかの全体俯瞰することが肝となると思いますので、まずは普遍的なウォーターフォール開発の進め方の中で、最低限どのプロジェクトでも忘れてはならないタスクを、過去の経験からピックアップしました。

1.システム運用業務領域のタスク定義

システム運用業務領域については、システム監視機能やジョブ管理機能の作成ができあがってくる総合テストフェーズあたりになって、さてどうやってシステム運用オペレータに対して運用作業やってもらうかを検討しようかなと考えていては、時すでに遅しです。要件定義や基本設計フェーズと同じフェーズで、そもそもどういうシステム運用業務とするか、そのために必要なシステム運用機能は何か、システム運用オペレータに対してどのように引継ぎを実施するかといったことを前もって方針を策定し、計画を策定しておくことが成功の肝となります。

# タスク 説明(タスク) 成果物 説明(成果物)
1 システム運用業務全体方針の策定 システム運用に係る作業、体制、役割分担等のシステム運用全体の方針を策定する。 運用全体方針書 システム運用全体に関して、作業、実施体制等の方針を定義したもの。
2 システム運用業務実施計画の策定 システム運用に関する体制や運用スケジュール等の詳細な計画を策定する。 運用実施計画書 システム運用に関する体制や運用スケジュール等の詳細な計画を定義したもの。
3 システム運用業務プロセス設計 新システム本番稼動後のシステムの運用におけるプロセスを定義する システム運用プロセス定義書 問い合わせ受付フロー、障害対応フロー、サービス管理フロー(問題管理、変更管理、リリース管理)など
4 システム運用マニュアルの策定 新システム本番稼動後のシステムの運用及び操作を行うためのマニュアルを作成する。 システム運用マニュアル,ユーザサポートマニュアル, 障害時対応マニュアル,災害対策マニュアル 通常運用体制と手順、定期運用体制と手順、特別運用体制と手順、障害時運用体制と手順、移行期間中の特別運用体制と手順など
5 システム運用評価基準(SLA/SLO)の策定 システム運用に関する評価基準(SLA、OLA含む体制、システム運用フロー、手順等のシステム運用実施に必要な基準)について定義する。 システム運用評価基準(SLA、OLAを含む) システム運用に関する評価基準(SLA、OLA含む体制、システム運用フロー、手順等のシステム運用実施に必要な基準)について定義したもの。
6 システム運用者研修 システム運用・保守業者に対する研修を行う 研修実施結果報告書 システム運用・保守業者に対する研修の実績として、習熟度分析や評価報告を記述したもの。
7 運用テスト計画の作成 テスト全体計画書、各種設計仕様書などを基に、運用テストの詳細計画を作成する 運用テスト実施計画書 業務アプリ用の運用テストを実施するための詳細な計画書として、テスト実施体制と役割、詳細な作業及びスケジュール、テスト環境、テストツール、合否判定基準を定義したもの。
8 運用テスト仕様(テストケース)の作成 運用テスト実施計画書に基づきテストシナリオを作成する。検証方法を検討し、テストデータを準備する。 運用テスト仕様書 運用テスト実施計画に従ったテスト種別ごとのテストシナリオと必要な資材。(入力用データ及び帳票、結果確認用データ及び帳票 等)
9 運用テストの実施 運用テスト計画書に従い、運用テストを行い、運用テストテスト結果報告書としてまとめる 運用テスト結果報告書 運用テストを実施した結果の報告書。実施した全てのテストケースとその結果を記述したもの。 発生した問題について、原因の究明結果、修正内容、再テストの結果を含む。マニュアルや手順書等、ソフトウェア以外の成果物のテストに関する検証結果も含む。

2.データ移行/システム切替領域のタスク定義

データ移行/システム切替領域については、システム機能やアプリケーション画面の作成ができあがってくる総合テストフェーズあたりになって、さてどうやって現行システムから新システムへデータ移行したりインフラの切り替えをやろうかなと考えていては、時すでに遅しです。要件定義や基本設計フェーズと同じフェーズで、データ移行/システム切替に係る方針策定やデータ移行/システム切替実施計画を策定ておくことが成功の肝となります。

# タスク 説明(タスク) 成果物 説明(成果物)
1 データ移行/システム切替全体方針の策定 データ移行/システム切替に係る作業、体制、役割分担等のシステム移行全体の方針を策定する。 データ移行/システム切替全体方針書 データ移行/システム切替全体に関して、作業、実施体制等の方針を定義したもの。
2 データ移行/システム切替全実施計画の策定 データ移行/システム切替全作業における作業内容、スケジュール、体制、役割分担、環境等の詳細な実施計画を策定する。現行システム側と計画の内容について調整する。 データ移行計画書/システム切替計画書 データ移行に関する記載として、作業内容、スケジュール等の計画を記載したもの。システム切替に関する記載として、作業内容、スケジュール等の計画を記載したもの。
3 データ移行設計 移行対象システムから新システムへのデータ移行の設計を行う。 データ移行設計書 データ移行対象:移行対象となるシステムから、移行対象をデータを抽出し、定義。データ移行方法:データ移行プログラムも含め、移行対象となるシステムと新システムのデータ項目のマッピングを定義し、データ抽出から、新システムへのデータ格納までの移行方法を定義。新旧テーブル・カラム・コード値対応表など。
4 データ移行ツール設計 データ移行作業用のツールの設計を行う。 データ移行ツール設計書 物理的なプログラムレベルの仕様:API、引数、内部処理ロジック
5 データ移行ツール実装 データ移行ツール設計書に従って、ソフトウェアコードの作成を行う ソフトウェアコード 実装したプログラム。各種設定ファイル等も含む。
6 データ移行ツールのテスト計画の作成 テスト全体計画書や各種設計書を基に、テストに関する詳細な計画(テストの目的、範囲、開始基準、完了基準、テスト方法、テスト環境、スケジュール)を立てる。 データ移行ツールテスト実施計画書 テストの目的/範囲、開始基準/完了基準、テスト方法、テスト環境/スケジュール
7 データ移行ツールのテスト仕様(テストケース)の作成 テスト実施計画書、各種設計書等に基づき、システム機能を検証するためのテストケースを作成し、テストデータを準備する。 データ移行ツールテスト仕様書 テスト対象、テストデータ、予想される結果、実施者、実施日時、実施結果、OK/NG判定"
8 データ移行ツールのテスト 個別テスト計画書及びテスト仕様書(テストケース)に従って、テストを行い、テスト結果をテスト結果報告書としてまとめる。 データ移行ツールテスト結果報告書 実施件数、障害件数、障害内容、申し送り等
9 システム切替設計 現行システムから新システムへのシステムごとの切替の設計を行う。 システム切替設計書 システム切替するにあたり、新システムの運用者の手配、新システムの設置、移行単位、現行システムのスケジュール、現行システムとの環境比較調査、移行対象データ量、移行データ方法等の包括した仕様を定義したもの。
10 システム切替手順書の作成 システム切替の際の手順書を作成する。 システム切替手順書 システム切替体制/連絡フロー/連絡先一覧、システム切替実施タイムチャート、システム切替実施手順書、システム切替実施後の確認項目

移行・切替リハーサル

# タスク 説明(タスク) 成果物 説明(成果物)
11 移行・切替リハーサル計画の作成 移行全体計画書や各種設計書を基に、移行・切替リハに関する詳細な計画(テストの目的、範囲、開始基準、完了基準、テスト方法、テスト環境、スケジュール)を立てる。 移行・切替リハ実施計画書 移行・切替リハの目的/範囲、開始基準/完了基準、移行・切替リハ方法、実施環境/スケジュールを定義。
12 移行・切替リハーサル手順・確認項目の作成 移行全体計画書、各種設計書等に基づき、移行・切替リの実施手順を作成し、テストデータを準備する。 移行・切替リハ仕様書 リハーサル体制/連絡フロー/連絡先一覧、リハ実施タイムチャート、リハ実施手順書、リハ実施後の確認項目
13 移行・切替リハーサルの実施 移行・切替リハ実施計画書および移行・切替リハ仕様書(手順書)に従って、リハを行い、リハ結果をリハ結果報告書としてまとめる。 移行・切替リハ結果報告書 実施内容、障害件数、障害内容、申し送り等を記載。
14 データ検証・稼動プレ判定 並行稼動及び本番移行の実施可否を判定する基準を設定し、リハ結果を踏まえ、稼動判定を行う。 稼動判定基準 新システムのサービスインの可否を定量的に判断するための基準

3.ユーザ教育領域のタスク定義

ユーザ教育領域については、システム機能やアプリケーション画面の作成ができあがってくる総合テストフェーズあたりになって、さてどうやってユーザへ周知したりユーザトレーニングやろうかなと考えていては、時すでに遅しです。要件定義や基本設計フェーズと同じフェーズで、ユーザ教育に係る方針策定やユーザトレーニング実施計画を策定し、ユーザ部門と前もって握っておくことが成功の肝となります。

# タスク 説明(タスク) 成果物 説明(成果物)
1 教育訓練全体方針の策定 教育に係る作業、体制、役割分担等の教育全体の方針を策定する。 ユーザ教育全体方針書 教育全体に関して、教育の作業、実施体制等の方針を定義したもの。
2 教育訓練実施計画の策定 研修の対象者、内容、方法、スケジュール、場所等の研修計画を策定する。利用マニュアル作成の計画を策定する。 教育訓練実施計画書 業務移行に関する記載として、研修や利用マニュアル作成の計画を定義したもの。
3 研修用資材の準備 研修教材の作成、指導員の育成を行う。研修会場、研修環境整備等を行う。 教材(マニュアル、Web教材、CD-ROM) 利用者に対する研修で使用する教材
4 利用者研修 教育・訓練計画に従い、利用者研修を実施する。 研修実施結果報告書 利用者に対する研修の実績として、習熟度分析や評価報告を記述したもの。
5 利用者マニュアルの作成 システムカットオーバ後に利用者が本システムを利用する際に参照するシステム利用マニュアルを作成する。 システム利用マニュアル 業務機能ごとのシステム利用マニュアル

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