大規模プロジェクトにおけるコミュニケーション改革について

なぜプロジェクトは炎上するのでしょうか、、そもそも実現性のない無謀な計画、判断力のない無能なプロジェクトマネージャ、声の大きいだけの棟梁、耳障りのいいことしか言わない普請大名、現場は理不尽な状況に耐えるしかない奴隷の心理状態、、、

その中で、大規模プロジェクトが炎上する理由の一つがコミュニケーションの失敗!コミュニケーションをどう改革するべきか、私見ですがアイデアをまとめました

現場全体で起きている事実を把握し、正しい情報を、正しく知り、正しく伝えられるようになるにも、まず自分たちがきちんとコミュニケーションの重要性を理解し、真のコミュニケーションを実現できるようになりましょう!

1.はじめに~プロジェクトの炎上とは~

プロジェクトが炎上した際のイメージ

【小規模案件の場合】 (10-20名程度のイメージ)

小規模案件においても炎上案件はあり得ますが、お客さん・全体像が見えていてわかりやすいことが多く、お客様が望むものは何か、それに対して何がダメなのか、それに対してどうやってリカバリーしていけばいいのかが把握しやすい状態です。

このため、残業・徹夜が発生するにしても、目的がハッキリし、ゴールがつかみやすいので、何とか頑張れます。このリカバリーの経験から得られることも多いことがあり、モチベーションやコミットメントを保って行くことが可能です。

プロジェクトマネージャーの責任は重く、各担当者への精神的ダメージもきついですが、一方で自己への学びもそれなりに得られるものです。

一方で、1人のスーパーマンのアサインによりプロジェクト管理も設計もクライアントコントロールを実施できることが多く、プロジェクトをリカバリーしていくことが可能となることが期待できます。

【大規模案件の場合】 (100名超~)

大規模案件でデスマーチに突入した場合は、基本的に消耗するのみ何が起こっているのか把握できないまま、方向感・目的感が無く、終わりなき残業に突入。そして、立て直せないままバッドエンドまで転げ落ちていきます

・・・いつ終わるのか分からない不安、何をやっているのか理解できないもどかしさが、確実に各担当者の精神を蝕んでいきます。

・・・何の作業をしているのか全体像が見えず、目的も不明、情報が落ちてこない一方で自分から情報を取りに行っていないという理不尽な叱責を受けることがあります。

・・・当初のマスタースケジュールと全く異なるスケジュールで進んでいるがスケジュールになっておらず、いつ終わるのかわからない不安に、さらに精神を蝕まれていきます。

・・・管理のための管理など単純作業が山積みとなり、無尽蔵に増員に次ぐ増員。場合によっては、プロジェクトルームはスペース不足になり作業環境が劣悪化します。

もはや責任所在は不明、各担当者の精神的ダメージは回復不可能なレベルさらに自己への学びが全く得られない状態です。

一人のスーパーマンに頼ってもプロジェクトは立て直せず、破綻の道へまっしぐらとなります。

大規模プロジェクトが炎上するいくつかの理由について

実際に私が見てきた大規模プロジェクト案件の炎上の理由は、どれもこれも状況は似ていて、そもそもソリューション自体が非現実的なスケジュールを前提としたり、存在しないスーパーマンをアサインすることがプランの前提であったりするほか、都合の良いポイントしか捉えず本質的な課題を理解できないプロジェクトマネージャーに対して、プロジェクトの現場において誰も「そもそもおかしい」ということを発することができないなど、最終的にはまるで愚かな軍隊じみた空気が蔓延しているという現場になっていました。

問題点を分解すると、計画自体の問題と、現場が始まった際の運営の問題に分けられると思います。

計画自体の問題というのは、

  • ソリューション自体が非現実的的なスケジュール
  • リソースプランの前提は存在しないスーパーマンのアサイン頼み
  • といったことです。

    現場が始まった際の運営の問題というのは、

  • 本質的な課題を理解せず都合の良いポイントしか捉えていないプロジェクトマネージャー
  • 忙しいことを理由に縦割りのチーム間で誰もタスクを拾わずに問題解決が進まない
  • 課題の解決策におかしいことを気付いていても自分に関係ないからと見て見ぬふり
  • そのうち、おかしいということ自体を発することができない、奴隷根性の蔓延
  • といったことです。ただし、これは、そもそものトリガーは、計画自体の問題から引き起こされることが常ですが。

    しかし、精神論ではプロジェクトは成り立たない

    大規模プロジェクトにおいては、状況が悪化していることに目をそむけたくなる心理状態と、大規模かつ複雑な全体像を把握することが極めて困難であることから、プロジェクトマネージャと言えども現場全体で起きていることを把握することができず(都合の良いポイントだけをとらえ)「とにかく進め※」という指令のみとなることが多いです。

    特に著者が経験してきた官公庁・公共関連のプロジェクトにおいては、「法律の施行日などの関係で納期は絶対」「契約がFixPriceの請負契約だから、当初の料金で作れ」と要求してくるため、お客様の要求が絶対で、どんなに理不尽でも抗うことが許されないという奴隷根性が管理層に染みついており、無策にも突き進むことを現場に強いることが多いと感じます

    また、会社組織の階層構造や、契約の階層構造を背景として、現場でも奴隷根性が染みついており、現場の技術者(一等兵、二等兵※)も理不尽な状況に耐えるしかない、という心理状態に陥りやすいものとなっています。

    ※プロジェクトの体制としては、プロジェクトマネージャーを筆頭に、チームリーダ、スタッフがいるだけでなく、場合によっては下請け、孫請けが存在します。実際に設計書を書いたりプログラミングする各技術者は、スタッフや下請けが担当し、いわば一等兵、二等兵といった兵士に相当するという意味です。

    精緻とは言えない無謀な作戦【実現性のないプロジェクト計画とシステムブループリント】を基に、不都合な真実を隠して大本営発表する司令官【無能なプロジェクトマネージャー】の号令で進み、“暗黙的に”命令に抗うことができぬ精神状態で、無能な作戦で多数の犠牲者を出した太平洋戦争の旧日本軍におけるインパール作戦の様に、必ず負ける戦い【デスマーチ】に臨まなければならないようになります

    2.大規模プロジェクトにおけるコミュニケーションの必要性

    プロジェクトマネージャにとってのコミュニケーションの必要性

    大規模プロジェクトで、コミュニケーションがうまくいかないと、プロジェクトマネージャーが、現場で起きている重要な問題を把握することが極めて困難となります

    …現場全体で起きている “事実”を把握することができない

    …現場の技術者(一等兵、二等兵)からは不平、不満は上がってくるが、具体的にどこが問題であるという事実がわからず、どう改善してほしいのかという意図を組むことができない

    …声の大きい現場の(棟梁的な)担当者や、耳障りの言い情報のみ挙げてくる(普請大名的な)管理者からの情報しか捉えられないようになり、現場の本質的な課題が見えなくなる

    …そのうち、目を向け耳を傾けるのは、都合の良い情報のみとなりがち

    現場にとってのコミュニケーションの必要性

    大規模プロジェクトで、コミュニケーションがうまくいかないと、現場にて、正しい情報を、正しく知り、正しく伝えることが極めて困難となります

    …いつ時点のどの情報が正確であるかわからない他、どうやって情報を得ればいいかわからない

    …現場で問題が発生しているが、どうやって上位層にエスカレーションしていけばいいかわからない

    …顧客の要求仕様と、設計の仕様に齟齬があることが、あとから発覚し、すべて設計のやり直しが発生

    …そのうち、いつ終わるのか分からない不安、何をやっているのか理解できないもどかしさが、各担当者の精神を蝕んでいきがち

    デスマーチを回避するために、コミュニケーションを正しく管理・実現することは必要不可欠です

    3.大規模プロジェクトにおけるコミュニケーションの課題

    3.1. コミュニケーションの認識そのものの課題

    大規模プロジェクトにおいては、関係者が多くコミュニケーションパスは指数関数的に増え、情報を伝達させること、意識を合わせることが非常に困難となります。

    コミュニケーションと情報は別物である

    『コミュニケーションと情報は別物である』ということを強く認識しましょう。この違いを認識できていないことそのものが課題となります。

    コミュニケーションの目的はきちんと共通認識を持つことです。

    単に情報を伝達するという情報共有だけではプロジェクトは成功しません。

    共通認識と単なる情報共有とを区別してコミュニケーションを図る必要があります。

    人間は知覚を期待していることのみ知覚する

    相手が話している内容の真の内容を理解しようとしていますか?言葉尻を捕らえたり揚げ足を問ったりしていませんか?『人間は知覚を期待していることしか知覚しない生き物である』ということを強く認識しましょう。

    こういうことを言っているだろうと決めつけて聞いてしまうため、認識違いが生まれます。

    相手に内容を確認しながら話を聞く “Active Listening”を心掛ける必要があります。

    コミュニケーションは相手への要求である

    先ほどの課題は話を聞く受けての課題でしたが、今度は話を発する話し手の課題です。『受け手の期待を理解して話をする必要がある』ということを強く意識しましょう。

    相手にうまく伝わらないのは自分の言いたい意見を発しているだけだからです。

    相手の期待に反するようなことを伝えても、相手に上手に伝わらりません。

    意思疎通の受け手の期待を把握し、納得してもらうことを心掛ける必要があります。

    関係者のバックグラウンドや経験が異なる状況においては、認識齟齬が生まれやすく、そこからシステムの仕様齟齬等の重大なプロジェクトリスクにつながる可能性が一層大きくなります。

    3.1. コミュニケーション方法・ツールの課題

    これまでのやり方では、コミュニケーション齟齬が発生したり、何度も手戻りが発生することによる長時間労働が当たり前となっていたり、スタッフの疲弊の一要因となっていると考えます。

    Eメールはコミュニケーションに不向き

    Eメールというツールは、コミュニケーションには不向きです。たとえば、To/CCに入っていない人は情報が共有されない。あとからアサインされた人は過去メールを転送してもらうことが必要となります。

    大量のメールから自分に必要なメールを見つけ出すことに時間を浪費し生産性にも逆行します。

    社内のみの情報共有にもかかわらずSMTP通信を利用することにより誤送信等情報漏洩に気を遣う必要があるということも問題です。

    上司からの口頭指示・ゆるふわな指示

    薄いインプットしかなく、アウトプットイメージの共有もない。この時点では自分でも明確なアウトプットイメージは持っていない上司が多いです。一方、人間は、目に見えるものには批判をしやすいのでスタッフが作成した資料については細かく突っ込みを入れてきます。結果、何度もやり直しが発生したり、レビュー時間が長くなったりします。

    チーム毎/階層毎にExcel管理表を使ったすり合わせ会議

    Excel文化では、課題の進捗が複数チーム含む全体で一元管理できず、メンバー間と階層毎に内容のすり合わせ作業が必要。チームリーダーは自分のチームの進捗会議に加え、リーダー間の進捗会議r、その上の階層との進捗会議に出なくてはならず、会議で日中が終わってしまう。

    使いづらいツールの利用に加えて、対面・口頭によるコミュニケーションを原則としてしまうことが多く、コミュニケーションに係るコストが膨大となってしまいます。

    4.コミュニケーション改革における対応方針

    コミュニケーションにおける認識齟齬を可能な限り回避し、長時間労働を回避するよう、あいまいさを排除したコミュニケーションを図ることを目指します。そんなことどうやって実現していけばいいのでしょうか?重要なポイントを3つ挙げます。

    • 口頭伝達文化ではなくテキスト伝達文化を徹底する
    • 検討結果だけではなく検討経緯を書き残す
    • 上司は口頭でごまかさず明確な文章で指示を出す

    ①口頭伝達ではなくテキスト伝達を徹底

    ビジネスチャットツールを使用してF2F(Face to Face)の会議を可能な限り減らすようにしましょう。

    当然のように存在している「情報共有」のための定例会議(日次・週次等)を可能な限り廃止しましょう。共有すべき情報は、ビジネスチャットツール上に投稿することで実現できます。

    持ち回りで担当者が進捗を報告するような会議を可能な限り廃止しましょう。チャットツール上で進捗状況を投稿することで実現可能。

    ②検討結果だけではなく検討経緯を書き残す

    チャットツールを利用することで検討経緯を残すことができます。ディスカッションを口頭のみで終わせるのではなく、また、結果のみ記すのではなく、検討経緯を書き出すようにしましょう。そうすることで、プロジェクトやチームに後から入ったメンバーもそれを追うことで経緯を知ることができるようになります。

    ③上司は口頭でごまかさず明確な文章で指示

    テキストにすることで上司側にもメリットが生まれます。人に伝える前に論理的に考える癖がつきますし、内容に抜け漏れが発生する余地を減らすことができるようになります。

    資料のレビューも(可能な限り)チャットツール上で行いましょう。フェイストゥフェイスのレビュー会議をしても、口頭で話した内容を、話ながらビジネスチャットツール上に同時に書きながらレビューを進めていきましょう。重要なのは、レビューワーは思いつきではなく適切なコメントをテキストで残すことを要求されるということになりますので、やっぱり違ったといったことをあとから発生することを防ぐことができるようになります。

    5.コミュニケーション改革において重要なこと

    大規模プロジェクトにおけるコミュニケーション改革において重要なことは、ツールではなく、プロアクティブに助け合う精神です。

    NGなアクション

    …他人の意見の批判だけをし、対案を出さないのはNG

    …縦割りの領域に甘んじ、ポテンヒットを拾わないばかりか他者に押し付けるのはNG

    …誰かが課題解決することをリアクティブに待つだけなのはNG

    こんな組織では、コミュニケーションツールを導入したところで、何も状況は改善しないでしょう。

    目指すアクション

    …助け合いや意見の出し合いの土壌があること

    …自分の担当領域にコミットメントを持ちつつ、他者の領域にオーバラップすること

    …積極的に課題解決に向けたアクションをとること

    組織、チーム、プロジェクトとして必要なことは、プロアクティブに助け合う精神であり、その必要性をメンバーに説き雰囲気づくりをプロジェクトマネージャが行うことも必要となりますが、トップダウンだけでなくメンバー側もボトムアップでこのような雰囲気を作っていくことが非常に重要となります。

    真に重要なこと

    コミュニケーションを行うためには、同じ経験をし、同じ共通認識を持つことが非常に重要となります。これを、同じコンテクストを持っているという言い方をします。 同じコンテクストを持てるようになるためには、日々のあいさつなどの日常のコミュニケーションそのものが必要となります。


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